皮膚科光線療法(紫外線治療)
昔から日光浴をすると乾癬が良くなるとか、アトピーのかゆみに効くことが知られていました。紫外線には免疫反応を抑える作用があり、うまく利用すれば様々な皮膚病に効果があります。紫外線とは10~400nmの波長の光ですが、その中には人体に有害な波長も含まれます。そこで、どの波長の光が安全で有効なのか研究が進み、まずUVA(320~400nm)という比較的長い波長の紫外線治療が臨床応用されました。しかしこの治療は、ソラレンという光感受性増感剤を内服または外用してから照射するため、入院して照射することが一般的で、患者に負担が大きい治療でした。
その後さらに研究が進み、UVB(280~320nm)という中波長紫外線の方がさらに有効なことがわかりました。しかしUVBのうち短い波長域では皮膚がんの発生の危険があります。治療に有効な波長はそのような危険な波長ではなく、308~313nmの波長であることがつきとめられ、それ以外の波長の光が出ないように工夫した照射装置が開発されたのです。それがナローバンドUVB(NB-UVB)と呼ばれる311nmを中心とする照射域の装置です。また、エキシマライトという308nmの光線発生装置(局所用)も開発され、現在は両者をうまく使い分けることで、効率よく皮膚病の治療ができるようになりました。
適応疾患と費用
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、尋常性白斑、掌蹠膿疱症、類乾癬、円形脱毛症などで保険適応になっています。(2020年4月より円形脱毛症にも保険が適用されるようになりました)
3割負担の方で1回約1,000円です。
治療のしかた
まず診察により皮膚科光線療法が効く皮膚病かどうか診断します。広範囲の場合はナローバンドUVBを、局所的な場合はエキシマライトを照射します。1~5分で終了します。すこし暖かいと感じる程度です。最初は週2回の通院をお勧めします。効果がでてきましたら、週1回~2週間に1回になります。
従来は皮膚科の治療というと軟膏をベタベタ塗るイメージだったと思いますが、最近は随分スマートになったものだと感じられるかもしれません。多忙なビジネスワーカーでも、時間予約で仕事のスキマ時間に治療できます。
当院では、全身用にキャンデラ社のダブリン7を採用しました。これは三面鏡に大きな蛍光灯(NB-UVB発光管)が並んでいるような構造で、「日焼けマシーン」を半分にしたような外観です。閉所が苦手の方でもストレスを感じないようなデザインです。服を脱いで三面鏡の前に立っているだけです。体の前側から、次に後ろ側からそれぞれ1~2分照射します。プライバシーを守るため、他の人に見られない一番奥に照射スペースを設置してありますのでご安心ください。
狭い範囲の場合には、ウシオ電機製のセラビームUV308miniを使用します。これは308nm波長のエキシマライトを発生する装置で、約5cm四方ずつ照射できます。あてられる面積は狭いのですが、強力ですので、5~10秒の照射を繰り返してあてます。円形脱毛症や尋常性白斑、掌蹠膿疱症、尋常性乾癬の現局した部分に用いられます。
この治療ができない方
- 皮膚がんやその既往のある人
- 日光に当たることを禁止されている人(例えば色素性乾皮症という珍しいご病気の方)
- 光線過敏症といって、光線で強い炎症を起こしやすい人(膠原病で光線過敏がある方はできません)
- 光線で炎症を起こしやすくなる薬を投与されている人(特に湿布薬にご注意ください)
- 免疫抑制剤の治療をされている人
治療症例
尋常性乾癬の症例です。体に写真のような皮疹が多発しており、ステロイド外用とアプレミラスト内服で経過をみていましたが、改善が乏しいため、NB-UVB週1~2回全身照射開始し、ある程度改善してからエキシマライトで局所照射にしました。
3ヵ月後、ほぼ平坦化しましたので、この部分は照射終了しました。他にはまだ皮疹が残存していますが、アプレミラスト内服を継続し、部分的にエキシマライト照射を続けています。
尋常性白斑症例です。右下口唇縁から白斑ができ拡大中でした。エキシマライトを週1回照射開始しました。
5か月後、かなり色素が回復して目立たなくなりました。
円形脱毛症症例です。ステロイド外用とともにエキシマライトを週1~2回照射開始しました。
1.5か月経過時。順調に発毛し、3ヵ月で終了。
6か月後には元通りに治りました。
但し、すべての症例で順調に改善するわけではありません。
円形脱毛症に対するエキシマ光線療法の効果について、群馬大学にて倫理審査を受けて症例を利用させて頂いております。
下記ご参照ください。ご不明な点がございましたら院長にお問い合わせください。